進化ダイエットと創造論者ダイエット

進化神学や進化美学があることは知っていたが、ブログ The tree of lifeで進化ダイエットの存在を知った。ここで紹介されているのはペットのための食品だが、人間向けの進化ダイエットもある。
The Evolution Diet
The Evolution Diet

本も出ており、ブログもある。サブタイトルが「オールナチュラル、アレルギーフリー」となっているのが怪しさ満点。オールナチュラルというフレーズは、たいがい「自然なものはなんでも良いものだ」的な自然賛美と結びついているように思う。このウェブサイトには進化ダイエットの四原則が示されている。

1.文化ではなく体に聞け
2.祖先のやり方をダイエットに応用しろ
3.自然のものを摂取し、トゥインキーのような極端な人工食品(AEFs:Artificially Extreme Foods)を避けよ
4.体が運動しろと言ったら運動し、眠れと言ったときに眠るべし

wikipediaには石器時代ダイエットPaleolithic dietという項目があり、やたら気合いが入った編集が行われている。よくよく調べてみるとこれがパレオダイエットとして今年二月頃に日本でも話題になっていたことを知った。

パレオダイエットを実践されているCoconut milk cafeさんのところでは食べて良い食材が挙げられている。たくさんのレシピが公開されており、健康に良いかどうかはともかく、たまに試してみるのはおもしろそう。

ほんの少量のイモ類を除き、ほとんど炭水化物を取りません。特に穀物は一切食べないです。パレオダイエットでは、食べない食品がいくつもあり、それらはパスタ・米・コーンなどの穀物の炭水化物・豆類・乳製品・砂糖・オリーブオイルを除くベジタブルオイルやコーン油などです。

穀物に限らず現代のほとんどの野菜、肉は品種改良されており原始人が食していたものとはかなり異なっているはず。パレオダイエットと進化ダイエットは少し違うようだ。パレオダイエットの中にも生肉を勧める流派もあれば勧めない流派もある模様。旧石器時代といっても200万年の幅があり、火の利用が広まる前と後では食事の内容も大きく異なった可能性が高い。また大人の乳糖耐性の広まりのように比較的最近起きた適応もあるのだし、いずれにしろ祖先が食べていたという事実からは、現代人の健康にも良いという結論は導き出せないのだが。

wikipediaにはこうも書かれている。

このダイエット方法は栄養学者と人類学者の中で論争となった。イギリスのNHSとアメリカのAmerican Dietetic Associationは一過性の流行ダイエットと見なした。批判者は、もし狩猟採集社会が「現代病」で苦しむことがないとしても、それは彼らの食事のカロリー不足や他の様々な要因のためであって、ある特定の食品の組み合わせを摂取しているからではないと主張した。一部の研究者はダイエットの根底にある進化の論理が不正確であると異を唱えた。またそれらが健康を増進しないか、健康リスクをもたらすことがあり、古代の石器時代の食事を正確に反映していないという理由からも特定の食品を推奨したり、食事を制限することにも反対した。さらにこのダイエットの極端なスタイルは誰にとっても現実的な選択肢であるわけではないとも指摘された。

創造論者ダイエット


さらには創造論者ダイエットもある。amazon.comで調べると、関連商品にはエデンダイエット、聖書に基づく健康本など類似本がいくつもある。創造論者ダイエット本の著者による簡潔なまとめがウェブサイトとして公開されていた。そのCreationist Diet Summaryによれば、

最近推奨されてる人気のダイエット方法は「石器時代ダイエット」だ。…ダイエットの背後にある理論は、200万年前に最初にホモ・サピエンスに進化したとき以来、数千年前に食生活が変わるまで我々の祖先が食べてきたものがもっとも健康的だ、というものだ。そのようなダイエットは、進化が我々に「用意した」食べ方だということになろう。そのようなダイエットはいかにもらしい。もし進化の理論を信じるならば。私はそうは思わない。だがこの「石器時代ダイエット」は創造論に基づいたダイエットがどのように見えるかを私に考えさせた。ここでは私は創世記の序盤の章が文字通りに、そして歴史的に正しいと受け入れている。

これらの節で神はあらゆる種類の植物性食物を食べものとしてあたえた。フルーツ、野菜、ナッツ、種、穀物、豆。だからこれらのどれもが創造論者ダイエットに含まれている。だが創造論者ダイエットの原則に関係するもう一つの点はこれら異なる食物のそれぞれが人間に消費されるようになったとき、そのやり方だ。聖書はこれらの疑問にはっきりとした答えを与えないが、もっともありそうなシナリオを聖書から集めることはできる。始まりはエデンの園だ。アダムとイブは追放される前に何を食べただろうか?創世記から引用した上の二つの節はアダムとイブの最初の食べ物が園の木の上で育ったものだったことをしめしている。ではどんな物が木の上で育つだろうか?まず思いつくのは果物だ。フルーツは230回も言及されておりずば抜けている。いくつかの具体的なフルーツがやはり言及されている。現在ほとんどのあらゆる栄養学者が果実の栄養価を認めており、もっと食べる必要があると認めている。フルーツは天然の炭水化物と糖(つまり精製糖でみられるスクロースではなくて、フルクトース)を多く含み、さまざまなビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取源として優れている。

しかし果物だからといって体によいばかりではない。糖尿病で食事制限されていれば、果物の摂取も制限される。調理については…

だがいつから人間は食物の料理を始めただろうか?聖書はいつから食物が調理されだしたかを特に述べていない。だがその兆候は創世記4:22でみられる。……青銅と鉄を作るには智恵と火が必要だ。もし人間が歴史のこれほど初期に青銅と鉄の精錬のために火を使うことを覚えたのなら、調理の方法もごく初期に覚えたことは、かなりあり得ることだろう。それでもあきらかに生の食料は調理された食料よりも「早い」食べ物であろう。これは重要な点だ。人間は調理された食料よりも、生の食料を先に食べていたのだから、生の食料は創造論者ダイエットのかなりの部分を占めなければならない。

なぜ先に生で食べられていたからといって、調理済み食料よりも多く食べなければならないとなるのか不明だが、進化ダイエットと同じ方向に向かっていく…。

だが生食ダイエットには潜在的な問題がある。この問題のほとんどは、十分な量を消費できないことに関連する。生のフルーツと野菜はすばらしい!それらは非常に高い栄養価を持つ。だがカロリーがあまり高くない。生野菜と生のフルーツだけを食べるのは、十分なカロリーを消費する[原文ママ]ことをとても難しくすることになる。……けれどもそのような制限ダイエットは減量のための最高の方法ではない。様々な栄養が不足していることもあるし、食事が単調になることもあるだろう。だから長く続けるためには厳しく制限されていない方が好ましい。

ビーガンについて

だがビーガンとベジタリアンは健康だろうか?そう、ビーガン食はノア時代以前のすべての人が食べていたものだ。それはおよそ2000年以上に及ぶ。そのうえ、その時記録された人々の年齢は900歳以上なのだ!だからビーガン食はノア以前の人々の良い助けとなったようだ。しかも科学研究はビーガンとベジタリアンは肉食者と比較してガン、心臓病、その他の変性疾患の罹患率が低い傾向があることを示している。……だが強い制限ダイエットは健康に好ましくないこともあろう。特に長期にわたる場合には。

冗談か本気かわからない。

最終的に創造論者ダイエットは参照する時代によって四つに分類され、古い時代ほど制限が厳しい。

エデンダイエット:生野菜と生の果実、生のナッツと種子、生の穀物もありかもしれない。
ノア以前ダイエット:上の食物に加えて調理された果実、野菜、ナッツ、種子、すべての穀物、豆(大豆、ピーナッツを含む)、植物油。
ノアダイエット:加えて低脂肪のトリムされた「クリーンな」肉、皮のないチキン/ターキー、クリーンな魚。
約束の地ダイエット:加えてミルクと乳製品、ハチミツ

この分類は良くできていると思う。制限が厳しければ厳しいほど信仰を試すことができる。健康志向派は緩やかな制限を選ぶこともできる。

ところでパレオダイエット、進化ダイエット、創造論者ダイエットには妙な共通点がある。
1.現代的な食品、とくに加工食品の忌避
2.自然なものは良いものだ、昔は良かったのだという根拠に乏しい仮定
3.健康に良い食材と悪い食材という二分法(量やバランスにはあまり言及しない)
4.ときどき栄養学的な説明をして自説を補強
一過性の流行ダイエット全体に共通することだけど。

1件のフィードバック

  1. […] This post was mentioned on Twitter by ohira_y, alt_az. alt_az said: "進化ダイエット、創造論者ダイエット"衝撃的な語感。"エデンダイエット、ノア以前ダイエット、ノアダイエット、約束の地ダイエット"もうなんと言っていいやら。 / 進化ダイエットと創造論者ダイエット « Nikki no ki http://htn.to/gGJwe8 […]

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